寒さが厳しくなってくると、温かい汁物が恋しくなりますよね。そこで汁物と聞いて多くの方がイメージするのが、けんちん汁や豚汁でしょう。
ですが、よくよく考えてみると、この2つの汁物には一体どんな違いがあるのでしょうか?イメージはよく似ていて、「違いは呼び方だけでは?」なんて思っている方もいますよね。そこで、けんちん汁と豚汁がどう違うのか、調べてみました。
けんちん汁とは?
豚汁というと、具だくさんの味噌汁に豚肉が入った豪華バージョン、といった印象ですね。これに対して、けんちん汁というのは一体どんな料理なのか、実はよく知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このけんちん汁は、ネーミングから料理がイメージしにくいのが特徴です。実はネーミングの由来は、発祥の地が「建長寺」というお寺であったことからだと言われています。
このお寺では、精進料理としてけんちん汁が振舞われていました。始めは「建長寺汁」であったものが、広く伝わるにつれて「けんちん汁」に変化したというわけですね。
つまり精進料理であるけんちん汁には、本来は豚肉は使用されません。さらに、カツオだしなども用いられず、シイタケ、昆布からとった出汁を用いられるのも特徴的です。
具材としては、ゴボウ、大根などがメインですね。けんちん汁というと、豪華な印象を持ってしまいますが、意外と質素なものなのですね。
けんちん汁と豚汁の大きな違い
けんちん汁と豚汁には、豚を加えるかどうか、という点だけではなく、もう1つ大きな違いがあります。それは、出汁の味つけです。
豚汁の汁は、味噌仕立てになっているケースが大半でしょう。中には味噌汁状のものを「けんちん汁」と呼ぶ地域もあるようですが、本来のものは、出汁に醤油で味付けをした澄まし仕立てとなっています。
根菜類をたっぷり使い、透き通る汁で煮込んだ上品な印象のあるけんちん汁。様々な具材に豚肉も加えられ、味噌味で豪快にいただく豚汁。両者を比べてみると、全く違った食べ物であるということがよく分かりますね。
それからもう1つの大きな違いが、調理法です。豚汁は具材を煮込んで作られますが、けんちん汁は、最初に具材をごま油で炒めた後、煮込んで汁物にします。そのため、ごま油の豊かな風味が実感できるのが特徴となっています。このように、一見よく似ているけんちん汁と豚汁は、材料、出汁、調理法と、様々な違いがあるものなのです。
けんちん汁と豚汁☆最近は!?
よくよく調べてみれば違いがたくさんある、けんちん汁と豚汁。ですが、最近では様々なレシピが登場し、澄まし仕立てに豚肉が加えられたもの、炒めた具材に味噌を加えた出汁で煮込んだ物、カツオで出汁をとったけんちん汁・・・と、その違いは明確ではなくなってきています。
本来の作り方を考えると、けんちん汁と豚汁は決定的な違いが多数あります。ただ、多くのレシピが登場し、両者の良いところが融合されていく中で、最近では境目も分かりにくくなっているようです。
中には違いにこだわりたい、本来のものを崩してはいけない、と考える方もいるかもしれません。ですがごま油で炒めた豚肉入りの味噌汁も美味しいものですし、結局は料理はおいしければ良い、という結論になってしまうというわけですね。
まとめ
けんちん汁と豚汁の違いをチェックすると、これまで間違った調理法をしてきたと、ハッとする人も多いでしょう。ですが、それが我が家の味なら、それは間違いではないのです。
結局は料理は、美味しく食べられるということが1番!違いが分かりにくくなったけんちん汁と豚汁の合体バージョンは、創意工夫の結果と言えますね。
主婦たちが作る汁物は、それぞれに家庭の味があり、工夫が施されているものです。1度正統派の材料や調理法で作ってみて、それぞれの味を確かめてみるのも面白いかもしれません。正しい作り方が分かれば、そこからさらなる美味しさを求めた工夫もイメージしやすくなるでしょう。